オートキャド(AutoCAD)を使って図面を書いている際に、画面をズームしたり移動する機会は非常に多いです。
マウスに付いているホイールを奥に向かって回転させればズームインに、手前に向かって回転させればズームアウトに。
ホイールを押しながらマウスを動かせば、紙を自分の手で掴んで動かすような感覚で画面移動が。
それぞれの操作は非常に直感的であり、オートキャド(AutoCAD)を知らない人にでも操作が出来ます。
だから今やこの機能を使わない人は皆無なんじゃないか、というくらいに広まっている機能です。
そんなホイールが持っている機能のひとつとして……
ホイールボタンをダブルクリックすると、オブジェクト範囲のズームコマンドになる、という機能はご存知だと思います。
これも図面を書く際には何度も使うことになる機能で、なかなか使い勝手の良い機能です。
ただ、最近のオートキャド(AutoCAD)では、オブジェクト範囲のズームをするとやたらと滑らかにズームイン・アウトするんですよね。
今回紹介するシステム変数は、そんな滑らかなズームイン・ズームアウトを止めたい方にお勧めの設定です。
■どんな意味があるのか
オブジェクト範囲ズームを実行した時以外にも、窓選択ズームをする際にもこの滑らかなズームの動きになります。
どのバージョンからそうなったのかは分かりませんが、2005ではそんな動きがなかったので、恐らくそれ以降に追加された機能ですね。
何というか、ふと気が付いたらこんな動きをするようになっていた、という感じです。
ではこの滑らかなズームにはどんな意味と効果があるのでしょうか。
……少しの時間考えてみましたが、少なくとも私にはどんな効果があるのか今ひとつ理解出来ませんでした。
強いて言えば、今の画面からズームイン・アウトする画面までの推移が分かるから場所の把握が簡単、というくらいです。
しかしその効果にしても、自分でズームの範囲を窓指定する場合にはあまり意味がありません。
また、オブジェクト範囲ズームにする場合では、結局作図画面を引いて見る為にこの操作をする訳ですから、推移が分かってもあまり意味がありません。
と言う感じで、私が考える限りでは、滑らかにズームイン・アウトする効果はあまりないんじゃないかという気がしています。
■以前の動きはどうなのか
では、こうした機能がデフォルトで用意される前のバージョンでは、ズームの操作はどんな動きだったのでしょうか。
まあ答えは簡単で、窓選択してズームをした場合、対角線窓の二点目を選択した瞬間にズームの処理が終わっていました。
滑らかにズームインせず、一瞬でズームイン・アウトが完了する、という動きだったんですね。
これがバージョンアップによって追加された機能によって、滑らかに動くズームによって時間がかかるようになった。
ちょっと悪意のある表現をしてしまうと、そんな極端な考え方も成り立つことになる訳です。
でも、時間がかかるようになったのは事実です。
もし滑らかなズームに一定の効果がない場合、ズームインの動きをしている時間というのは要するに無駄な時間ですよね。
という理由により、特に滑らかな画面の動きにこだわりを感じない場合、ズームは昔の動きに戻した方が良い、ということになります。
これは好みの問題とかではなく、作図をする際の時間効率として考えてそうなる、ということです。
私の意見が全て正しい訳ではありませんから、まずはどちらの設定も試してみた後で判断をしてみることをお勧めします。
■システム変数:VTENABLE
このシステム変数は、オートキャド(AutoCAD)の画面上でズーム・回転操作をした際の動きをコントロールします。
数値は「0」~「7」が入り、オートキャド(AutoCAD)の初期設定では「3」になっています。
このシステム変数は、ズーム操作の動き以外にも、ビューの角度を回転する場合、またスクリプトに対した場合の動きもコントロールします。
でもこれらの操作で動きを分ける意味もあまりないので、全部OFFにしておく設定をお勧めします。
操作方法は以下の通り。
オートキャド(AutoCAD)がコマンド待ち状態の時に「VTENABLE」と入力して「Enter」を押します。
VTENABLE の新しい値を入力 <3>:
そうすると上記のような表示が出ますので、ここで全部OFFの設定である「0」を入力して「Enter」で終了。
これで以降はズームインをする場合でも、オブジェクト範囲ズームを使う場合でも、動きは滑らかではなく一瞬でした。
どう考えてもズームは一瞬で終わった方が良いので、この設定は最初に変えておくことをお勧めします。
■ホイールマウスが登場する前
しかし……
「今やホイールを使わない人はいない」みたいな話をしても、それってかれこれ10年以上も昔の話なんですよね。
これだけ使われている訳ですから、これが一般的な手法となるのも当然というような気がします。
前からこの機能が使われているから、ホイールを使わないズームなんて石器時代くらい昔の話ですよね。
ダイナミックズーム機能なんて、きっと今は誰も使っていないんだろうな……という私も使ってませんけども。
昔は「ダイナミックズームがないと作図が進まない」というくらいに愛用していたと記憶しています。
しかしもっと便利な機能の出現により、一夜にして二軍落ちどころか引退という状況になってしまいました。
こういうのを「操作の進歩」と言えるんじゃないでしょうか。
こうした便利な機能をもっと便利に使いこなす為に、今回紹介するシステム変数を一度ぜひ試してみてください。