オートキャド(AutoCAD)の主な機能であるモデル空間とペーパー空間について。
前回は概要と使う場面を簡単に説明してみましたが、何となくでも良いので伝わったでしょうか。

これをもっと詳しく書いていくと、あと10以上の記事が必要になるな……という感触がありました。
でもそこまで説明して、そのペーパー空間の線種ピッチはこう設定します、という解説はすぐに終わる。

本番よりも前振りが異常に長いと、いくら説明を分かりやすくしても、結局は全然伝わらない。
そう思ったので、ここではごく簡単な説明で終わることにしましたが、ポイントは以下のところです。

・ペーパー空間はモデル空間とは別の領域を持っている
・モデル空間を抜きだして表示することが可能

こうした特色を持っている為、モデル空間で調整した線種尺度が、ペーパー空間に上手く反映されない事があるんです。

今回はそんな状態を解決する為のシステム変数を紹介します。

■システム変数:PSLTSCALE
このシステム変数は、ペーパー空間に表示する要素の線種尺度をコントロールします。
具体的にはどういう事なのかというと、設定は二種類で、それぞれ以下のような状態になります。

0……モデル空間で設定した内容を反映する
1……ビューポートの尺度にあわせる

具体的には……とか言いながら、この設定の説明ではよく分からないかも知れませんね。

まずは「PSLTSCALE=0」の場合。

これは書いてある通り、モデル空間での線種尺度設定「LTSCALE」の表示が反映されます。
モデル空間で印刷した結果と全く同じになる、ということです。

モデル空間で「LTSCALE」と「CELTSCALE」を意識して設定している場合はこちらがお勧めです。
そうすれば、ペーパー空間では特に何も考えず、モデル空間と同じ感覚で線種が表示されますから。

次に「PSLTSCALE=1」の場合。

ちなみにこちらがオートキャド(AutoCAD)の初期設定ですが、これはペーパー空間にあるビューポートの縮尺を反映させる設定です。

縮尺が違う図面があっても個別に線種尺度を設定しないで、ペーパー空間の縮尺で線のピッチを設定するというやり方。

どちらの設定にもメリットとデメリットがあって、こちらの設定が絶対に便利ですみたいなことはありません。
ただ、基本的なやり方が二種類出てくるというのが問題なんです。

それぞれのやり方に適した設定を知っておかないと、モデル空間では線種がちゃんとしているのに、ペーパー空間ではピッチが粗いということが起こります。

このあたりの設定を見ると、オートキャド(AutoCAD)がメンドクサイ設定の多いCADだと思われるのも分かる気がします。

線種を適切に表現するのに、一体いくつの設定が必要なんだよ……
そういう意見があったとしたら、私は「いや、そんなことはないですよ」とは言えません。

確かに面倒な設定が多いことは否定出来ませんから。

ただ、何も設定出来ないCADを使ったりすると、こうした設定が出来るだけマシという考えもあるな、と思ったりします。

具体的な例を挙げた説明は次回にしますので、線のピッチをコントロールする設定についてあと少しお付き合いください。