オートキャド(AutoCAD)の点線などを適切に表示する為に、いくつかあるシステム変数を紹介してきました。

ちょっと細かい話が多すぎると感じるかも知れませんが、印刷した図面で点線がきちんと表示されているかどうかは非常に重要なことです。

オートキャド(AutoCAD)を使って図面を書いていると、意識することが少なくなってしまいますが……
データを紙に印刷した図面こそが最終形なんです。

最終的な成果品で全部の線が実線になっているとか、そういうのは商品としてNGですよね。
その為に少し細かい設定が色々と用意されている訳ですから、一通り覚えておくことをお勧めします。

今回はそうした線のピッチをコントロールする設定の最後、ペーパー空間での線ピッチについて考えてみます。

■オートキャド(AutoCAD)の基本的概念
作図のやり方にもよりますが、オートキャド(AutoCAD)を使った通常の作図は「モデル空間」で行います。

そしてモデル空間の中に図面枠を配置して、そのまま図面が完成する場合も多々あると思います。

しかし場合によっては、オートキャド(AutoCAD)が用意しているもう一つの作業スペースである「ペーパー空間」を使うこともあります。

この「モデル空間」と「ペーパー空間」という概念は、実際に使ってみると非常に便利でありがたい機能です。
もうこの機能がないと仕事にならない、というくらいに。

でも、その考え方を理解するまでは、どうしても「なにそれ…あんまり関わり合いたくない話だな」と思われがちです。

私も覚えるまではそう思っていました。
それに、概念をわかりやすく説明するのもちょっと大変なので、今まで触れてこなかった機能でもあります。

これから説明しようとするシステム変数は、ペーパー空間での線種尺度をコントロールするもの。
だから、ペーパー空間の説明から逃げることは出来ないんですよね。

という訳で、ここではモデル空間とペーパー空間の関係について、非常に簡単な説明に挑戦してみます。

■モデル空間とペーパー空間
モデル空間というのは、オートキャド(AutoCAD)で通常作業するスペースのことを指します。

オートキャド(AutoCAD)は対象物をそのままの大きさで作図するので、どんなに大きな対象物も入る様になっています。

そこで線とか円などを使って形状を作成していき、文字や寸法を入力して図面として仕上げる訳です。
そんな作業をするスペースをオートキャド(AutoCAD)では「モデル空間」と呼びます。

先程も書きましたが、モデル空間に作図する対象物のサイズには特に制限がありません。
そういう性質があるからこそ、建物とか敷地などの巨大なものも図面として作図することが出来るんです。

ここまでは良いでしょうか。
でも、そうした巨大なものを図面にする場合、全体を1枚の図面に納めるのは難しいですよね。

紙のサイズは大きくてもA1(841×594)ですから、そこに巨大な建物を入れようとすると、かなり小さくする必要があります。

でもそうすると、縮小しすぎて図面としての役目を果たさないという問題が発生します。
例えば100m×100mの建物をA1サイズの図面に収めようとすると、どの程度縮小が必要なのか。

A1サイズの縦は594mmだから、1/200に縮小してようやく500mm×500mmの建物として図面に納まるようになります。

でも、1/200に縮小するというのはかなり小さな倍率で、実際そこまで縮小すると細かい部分は全然分からなくなります。

分かるのは「ここに壁があるな…」程度で、その壁が何でできているのかとか、そういう細かい情報は全く伝わりません。

それでは困りますよね。
見る側に伝えたい情報が伝わらないのであれば、図面として役に立っていないのと同じですから。

ならばどうするかというと、図面を分割して、ある程度情報を盛り込める図面にするしかありません。
その為にはペーパー空間が必要、という話になっていくる訳ですが、それについては次回に続きます。